「またなんか増えた」──現場に嫌われないシステム導入のために、SEとして考えていること






「またなんか増えた」──現場に嫌われないシステム導入のために、SEとして考えていること

介護・医療 × IT

「またなんか増えた」
──現場に嫌われないシステム導入のために、SEとして考えていること

導入初日に聞こえた、あの一言

先日、ある介護施設での打ち合わせでのことです。

「今回導入したツール、スタッフさんの反応どうでした?」

施設長「うーん…若い子は使ってくれるんだけど」

「ベテラン勢が」

施設長「”またなんか増えた”って」

正直、SEとして一番キツい瞬間です。

いいものを提案した自信はある。機能も揃っている。コストも見合っている。でも現場からは「またなんか増えた」。この一言で、どれだけ良いシステムでも定着しないまま終わる可能性がある。介護・医療の現場でシステム導入に携わってきた中で、僕はこの壁に何度もぶつかってきました。

ツールが悪いのか? いや、違う

こういうとき、つい「UIが難しかったかな」「もっと簡単なツールにすべきだったか」と考えがちです。もちろんそれも一因ではあります。でも、僕がこれまで見てきた”定着しなかった案件”に共通していたのは、ツールの問題ではありませんでした。

問題は「巻き込み方」です。

もっと具体的に言うと、導入が決まるまでのプロセスに、実際に使う現場のスタッフが一切関与していないケースがほとんどでした。経営層や管理者が「これがいい」と判断し、ある日突然「来月からこれ使ってください」と降ってくる。使う側からすれば、自分たちの意見を聞かれることもなく業務が変わるわけです。「またなんか増えた」と言いたくなる気持ちは、正直よくわかります。

導入の前に「対話」を設計する

だから僕は最近、システムの提案書を持っていく前に、まず現場のスタッフと話す時間をもらうようにしています。

といっても大げさなヒアリングではありません。休憩時間に「今の業務で一番めんどくさいことって何ですか?」と聞くだけ。すると「記録の転記が二度手間」「申し送りが口頭だから抜け漏れる」「研修の日程調整だけで疲れる」──そんなリアルな声が出てきます。

この声を拾った上で「こういう困りごとを解決するために、こんな仕組みを入れようと思っています」と説明すると、反応がまるで違う。「あ、あの話ちゃんと聞いてくれてたんだ」と。システムが”上から降ってきたもの”ではなく、”自分たちの声から生まれたもの”に変わる瞬間です。

介護・医療の現場が特殊な理由

IT業界から介護・医療の領域に入ったとき、最初に感じたのは「ここは”効率化”という言葉だけでは動かない」ということでした。

介護や医療の現場で働く方々は、目の前の利用者さん・患者さんに向き合うことを最優先にしています。それは当然のことです。だからこそ「このシステムを入れると業務が効率化されます」と言われても、「それより今、目の前のこの方のケアが大事なんです」となる。優先順位が違うんです。

さらに言えば、介護・医療の現場にはITに不慣れな方も少なくありません。普段の業務でPCに触れる時間が限られている中で、新しいシステムのログイン方法を覚え、操作手順を理解し、日々の業務に組み込む。これは想像以上にハードルが高い。だからこそ、技術的な優位性だけでなく「この現場で、この人たちが、無理なく使えるか」という視点が欠かせません。

だから僕は「効率化」ではなく「余裕を作る」という言い方をするようにしています。「この仕組みで記録の時間が減れば、その分利用者さんと向き合う時間が増えますよ」と。やっていることは同じでも、届き方がまるで変わります。

合意形成まで設計するのが、コンサルの仕事

システム導入というと、要件定義・開発・テスト・納品というフローを思い浮かべる方が多いと思います。でも介護・医療の現場では、その手前にある「合意形成」のフェーズがもっとも重要だと感じています。

現場の声を聞く。課題を共有する。一緒に解決策を考える。その上で「じゃあこれを試してみましょう」という流れを作る。ここまでを含めて設計するのが、本当の意味でのコンサルティングだと僕は思っています。

「またなんか増えた」ではなく、「これ、私たちが言ってたやつですよね」──そう言ってもらえる導入を、一つでも多く実現したい。現場の人たちが自分ごととして受け入れてくれた瞬間に、はじめてシステムは「定着」へ向かいます。

テクノロジーはあくまで手段でしかありません。それを届ける過程にどれだけ誠実に向き合えるか。それがSEとしてこの業界に関わり続ける、僕のモチベーションです。

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