Excelは悪くありません。でも「とりあえずExcel」が積み重なった先に、何が起きているかを知ってほしいのです。
「とりあえずExcelで管理」が止まらない病院の話
2026年 / カテゴリ:現場SEあるある / 読了目安:6分
医療・介護施設の現場に入ると、必ずと言っていいほど出会うものがあります。それが「Excelファイルの山」です。患者管理、シフト管理、在庫管理、クレーム管理……。電子カルテやシステムが入っているのに、気づけばあらゆるものがExcelで管理されています。
Excelが悪いわけではありません。問題は「とりあえずExcel」という判断が積み重なった結果、誰も全体像を把握できない状況が生まれていることです。今回はその構造と、なぜ止まらないのかを整理してみます。
「とりあえずExcel」が生まれる瞬間
「とりあえずExcel」が生まれる瞬間は、たいてい同じです。新しい業務が発生した、既存のシステムでは対応できない例外が出た、担当者が変わって引き継ぎが必要になった。そのたびに「とりあえずExcelで作っておこう」という判断が下されます。
この判断自体は合理的です。Excelはすぐ使えて、誰でも触れて、カスタマイズも自由です。スピードという点では最強のツールと言っても過言ではありません。問題はその後です。「とりあえず」のはずが、気づけば基幹業務を支えるファイルになっていることがあります。
「このファイル、誰が作ったんですか?」「前任の山田さんですね……もう退職されています」というやり取りは、医療現場でも珍しくありません。作った人しかわからないExcelが、業務の要になっているケースは本当に多いです。
「Excel管理」が引き起こす3つの問題
「とりあえずExcel」が積み重なると、現場に3つの問題が起きます。まず「データが分散する」問題です。同じ患者の情報が、電子カルテ・Excel・紙の3か所に存在するという状況が生まれます。どれが最新かわからず、転記ミスが起きやすくなります。
次に「属人化が進む」問題です。Excelは自由度が高いがゆえに、作った人のクセや知識が反映されます。関数が複雑になればなるほど、担当者が変わったときに誰も触れないファイルになっていきます。
そして「全体像が見えなくなる」問題です。部署ごと・担当者ごとにExcelが乱立すると、施設全体として何のデータがどこにあるかを把握している人がいなくなります。これは単なる管理上の問題ではなく、医療安全にも関わることがあります。
「インシデントの集計、どこでやってますか?」「えっと、Aさんのパソコンの中に……」という会話を聞いたことがあります。医療安全に直結するデータが、個人のExcelに眠っている現場は今も存在します。
なぜ「Excel卒業」が進まないのか
では、なぜExcelから抜け出せないのでしょうか。一番の理由は「代替システムを入れることへの恐怖」です。今のExcelは少なくとも動いている。新しいシステムに移行して、もし使いにくかったら、データが消えたら、と考えると動けなくなります。
もう一つの理由は「誰も全体を把握していない」ことです。今のExcel管理の全体像を整理することすら、現場には時間的・人的な余裕がありません。問題とわかっていながら、現状維持が続きます。
「Excel卒業」の正しい順番
Excelからの脱却を急ぐ必要はありませんが、正しい順番で進めることが大切です。まず「どのExcelが業務の要になっているか」を棚卸しすることから始めます。全部を一気に変えようとすると失敗するので、影響が大きいものから優先順位をつけます。
次に「そのExcelが本当にシステム化すべきものか」を検討します。月1回しか使わないものや、担当者が1人だけのものは、Excelのままで良い場合もあります。全部をシステムに移行しようとするのではなく、「ここだけは替える」という絞り込みが、成功の鍵になります。
「このExcel、誰かが急に休んだら業務が止まりますか?」という質問が、棚卸しの出発点として有効です。「止まる」と答えが返ってきたものから、優先的に対処することをおすすめします。
この記事のまとめ
- 「とりあえずExcel」は合理的な判断ですが、積み重なると危険です
- データ分散・属人化・全体像消失の3つが主な問題です
- Excel卒業は急がず、まず棚卸しから始めることが大切です
- 「誰かが休んだら止まるExcel」から優先的に対処しましょう
- 全部を変えようとせず、絞り込むことが成功の鍵です
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