現場スタッフに『前のシステムに戻して』と言われた日

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あの言葉は今でも忘れられません。でもあの経験があったから、今の自分があります。

現場スタッフに「前のシステムに戻して」と言われた日

2026年 / カテゴリ:現場SEあるある / 読了目安:6分

システムエンジニアをやっていると、忘れられない言葉があります。自分にとってそれは「前のシステムに戻してください」という一言でした。新しいシステムをリリースして数週間が経ったころ、現場のベテランスタッフの方にそう言われたときのことは、今でも鮮明に覚えています。

あのときの感情は、悔しさと申し訳なさが混ざったような、なんとも言えないものでした。自信を持って届けたはずのシステムが、現場の人の言葉一つで全否定されたような感覚。でも、あの経験がなければ今の自分のシステム設計の考え方は作られなかったと思っています。

何が起きていたのか

そのシステムは、客観的に見れば前のシステムより優れていました。処理速度は上がり、データの一元管理ができるようになり、レポート出力も自動化されていました。開発チームとしては、明らかな改善だという自信がありました。

でも現場のスタッフにとっては違いました。10年以上使い続けた操作の流れが変わり、毎日の業務の中で体に染み込んだ手順が使えなくなっていました。「前のシステムならここを押すだけだったのに」という声が、あちこちから聞こえてきました。機能的な優劣ではなく、慣れの問題だったのです。

💡 気づいたこと

「使いやすい」の定義は、設計者と使用者で全く異なります。設計者が考える使いやすさは「論理的に優れた操作性」ですが、現場が求める使いやすさは「今日も昨日と同じように使えること」であることが多いです。

最初にした「間違い」

あのとき自分が最初にしたことは、「なぜ新しいシステムの方が優れているか」を説明することでした。処理速度のデータを見せ、機能の比較表を作り、「慣れれば必ず使いやすくなります」と伝え続けました。

今思えば、これが完全に逆でした。現場スタッフが伝えたかったのは「このシステムが嫌いだ」ということではなく、「自分たちが置き去りにされた感覚がある」ということだったのだと思います。論理で返すべき場面ではなく、まず聞くべき場面だったのです。

⚠ やってしまいがちなこと

現場から「使いにくい」という声が上がったとき、最初に「なぜ優れているか」を説明しようとするのはSEの悪いクセです。まず「どこが使いにくいか」を具体的に聞くことが、唯一の正解です。

転換点になった一言

何度か現場に足を運んで話を聞き続けたある日、そのベテランスタッフの方がこう言いました。「新しくなること自体は別にいいんです。でも、誰も私たちに聞いてくれなかった」。

その言葉で、すべてがわかりました。問題はシステムの良し悪しではなかったのです。移行のプロセスで、現場スタッフが「自分たちは関係ない場所で物事が決まっていく」と感じてしまっていたことが、本当の問題でした。

そのあと、何をしたか

システムを前に戻すことはしませんでした。でも、すべてのアプローチを変えました。まず現場のスタッフ一人ひとりに時間をもらい、「どこが一番困っているか」を丁寧に聞きました。その声を集めて、操作の流れを一部見直し、よく使う機能への導線を短くしました。

そして何より、「この改修はAさんから聞いた声を反映しました」という形で、スタッフに直接フィードバックするようにしました。自分の声がシステムに反映されたと感じた瞬間、現場の空気は変わりました。3ヶ月後、あの言葉をくれたスタッフの方が「最近は使いやすくなってきました」と言ってくれたときは、本当に嬉しかったです。

✅ この経験から学んだこと

現場スタッフの「前に戻して」という言葉は、システムへの拒絶ではなく「もっと関わりたい」というサインであることが多いです。その声を入口にして、一緒に作り直す姿勢を持てるかどうかが、SEとしての分岐点になります。


この記事のまとめ

  • 「使いやすい」の定義は設計者と現場で全く異なります
  • 「前に戻して」という声に論理で返すのは逆効果です
  • 本当の問題はシステムではなく「置き去りにされた感覚」であることが多いです
  • 声を聞いてシステムに反映することが、現場との信頼を作ります
  • 「前に戻して」はサインです。入口として使える言葉です
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