「使いやすいシステムを作った」のに、なぜか使われない。その理由、考えたことはありますか?
「使いやすいシステム」と「使われるシステム」は別物という話
2026年 / カテゴリ:現場SEあるある / 読了目安:6分
「使いやすいシステムを作りましょう」という言葉は、システム開発の現場でよく聞きます。でも、使いやすいシステムと使われるシステムは、実は別のものです。この違いに気づかないまま開発を進めると、完成度は高いのに誰も使わないシステムができあがります。これ、意外とよくあるパターンです。
「使いやすさ」は設計者が決められますが、「使われるかどうか」は現場が決めます。この主語の違いを意識できているかどうかで、完成後の現場での扱われ方がまるで変わってきます。
「使いやすい」は誰にとっての話か
「使いやすいシステム」を目指すとき、無意識のうちに「自分が使いやすいと思うシステム」を作ってしまうことがあります。整理された画面、論理的な操作フロー、わかりやすいボタン配置。設計者の目線では完璧でも、現場スタッフの目線では「なんかしっくりこない」になることがあります。
使いやすさの基準は、使う人の経験・習慣・業務の流れによって変わります。医療事務のスタッフにとっての「使いやすさ」と、看護師にとっての「使いやすさ」は違います。一つの基準で「使いやすい」を定義しようとすること自体に、無理があります。
「使いやすいですか?」とヒアリングすると「まあ、使えます」という答えが返ってくることがあります。「使える」と「使いやすい」は違います。そして「使いやすい」と「使いたい」も違います。この三段階を意識するだけで、ヒアリングの深さが変わります。
「使われるシステム」に必要なもの
使われるシステムには、使いやすさとは別の要素が必要です。一つ目は「使わざるを得ない理由」です。業務フローに組み込まれていて、使わないと仕事が回らない状態になっているシステムは、使いにくくても使われます。逆に、使っても使わなくても業務が回るシステムは、少しでも使いにくいと感じた瞬間に使われなくなります。
二つ目は「使うことへの納得感」です。「なぜこのシステムを使うのか」が現場に伝わっていないシステムは、使いやすくても長続きしません。目的の共有が薄いまま導入されたシステムは、担当者が変わったときに一番最初に使われなくなります。
「使いやすさ」より先に決めるべきこと
設計を始める前に「このシステムが使われない理由になるものは何か」を考えることが、使われるシステムへの近道です。操作が複雑すぎるのか、ログインが面倒なのか、入力項目が多すぎるのか、それとも「使わなくてもいい」という雰囲気があるのか。
「使われない理由を潰す」という設計の入り口は、「使いやすさを追求する」とは少し違います。後者は加点の発想ですが、前者は減点の排除です。現場への定着を最優先にするなら、加点より先に減点の排除から始めることが有効なことが多いです。
機能を増やすほど「使いやすくなる」と思いがちですが、現場にとっては逆のことが多いです。使わない機能が増えると、画面が複雑になり、必要な操作を探すのに時間がかかります。引き算の設計が、使われるシステムを作る鍵になることがあります。
最終的に「使われるシステム」を決めるのは現場
どんなに優れた設計をしても、最終的に「使われるかどうか」を決めるのは現場のスタッフです。設計者にできることは、「使われやすい状況を作る」ことだけです。強制はできません。
だからこそ、設計の段階から現場を巻き込み、稼働後も声を聞き続けることが大切です。「使いやすいシステムを作った」で終わるのではなく、「使われているシステムを育てた」と言えるところまで関わることが、本当の意味でのシステム開発の完成だと思っています。
稼働後3ヶ月で「このシステム、今どれくらい使われていますか?」と現場に聞いてみてください。ログのデータより、現場の肌感のほうが正直なことがあります。その答えが、次の改善の出発点になります。
この記事のまとめ
- 「使いやすさ」は設計者が決めますが、「使われるかどうか」は現場が決めます
- 使いやすさの基準は、使う人によってまったく異なります
- 使われるシステムには「使わざるを得ない理由」と「納得感」が必要です
- 加点より先に「使われない理由を潰す」設計が有効なことが多いです
- 「使われているシステムを育てた」と言えるところまで関わることが完成です
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