システムを使うのは現場なのに、会議に現場がいない。この構造、おかしいと思いませんか。
IT会議に現場スタッフが一人もいない不思議
2026年 / カテゴリ:現場SEあるある / 読了目安:6分
医療・介護施設のIT導入に関わっていると、不思議な光景に出会うことがあります。システムの導入を決める会議の参加者が、経営者・事務長・ベンダーの営業担当だけで、実際にそのシステムを毎日使う現場スタッフが一人もいない。そういう会議が、思っているより多いです。
「現場には後で説明する」「現場は業務があって来られない」「現場に細かいことを決めさせると収拾がつかない」。そういう理由があるのはわかります。でも、その判断が後々大きなコストになることを、関わるたびに実感します。
「現場には後で説明する」の末路
「現場への説明は後で」という判断が下されたプロジェクトは、稼働の直前になって必ず慌てます。導入が決まったシステムを初めて見た現場スタッフから「この操作、うちの業務には合わない」「こんな画面、使えない」という声が一気に上がります。
でも、そのタイミングではもう変えられないことが多いです。仕様は固まっている、予算は使い切っている、稼働日は決まっている。現場の声を聞いた結果、「ご意見はわかりましたが、今回はこの仕様で進めます」という結末になります。最初から現場を巻き込んでいれば防げたはずの声が、最後に出てきても手遅れになるパターンです。
「現場に聞くと要望が増えすぎる」という懸念はわかります。でも、後で出てくる要望の方がずっとコストがかかります。最初に聞いて整理する手間より、稼働後に修正する手間の方が、何倍も大きいです。
なぜ現場が会議に呼ばれないのか
現場スタッフがIT会議に呼ばれない理由は、いくつか構造的なものがあります。まず「ITの話は現場には難しい」という思い込みがあります。専門的な話が出るから、現場の人を連れてきても混乱するだけだという判断です。
でも実際には、現場スタッフが会議に必要な理由は技術的な判断のためではありません。「自分たちの業務がどう変わるのか」「どこが不便になるのか」を、現場の言葉で伝えてもらうためです。その役割は、どんなに優秀なSEや事務長でも代わりに担うことはできません。
次に「現場は忙しい」という理由があります。これは本当のことです。でも、1時間の会議に参加できないほど忙しい現場が、新しいシステムに習熟するための時間をどこから捻出するのかという疑問が残ります。導入前の1時間を惜しんだ結果、導入後に何十時間もかけて問題を解決することになるケースは少なくありません。
「現場代表」の落とし穴
「現場からは主任さんに出てもらいます」という形で解決しようとするケースがあります。でも、主任さんが全ての現場スタッフの声を代表できるとは限りません。ベテランの主任さんと、入って1年のスタッフでは、システムに対する感覚がまったく違うことがあります。
「現場代表」が一人参加していても、その人が拾えていない声が必ず存在します。完璧な代表はいません。だからこそ、会議とは別に「現場の複数のスタッフにヒアリングする」という工程を、プロジェクトの設計に組み込むことが大切です。
会議への参加が難しいなら、15分のヒアリングでも十分です。「今一番手間がかかっている作業はどれですか?」という一言から始めるだけで、会議室では出てこないリアルな声が集まります。
現場が会議に参加すると何が変わるか
現場スタッフが会議に参加することで変わることがあります。一つ目は「自分たちが関わった」という感覚が生まれることです。同じシステムでも、自分たちの声が反映されたと感じているかどうかで、稼働後の受け入れ方がまったく変わります。
二つ目は「会議室では出てこない情報が入ってくる」ことです。現場スタッフは、事務長や経営層が気づいていない業務の細部を知っています。「実はこの作業、毎月末に2時間かかっていて」という一言が、設計の方向性を大きく変えることがあります。
システムを使うのは現場です。その現場が最初から関わっていないIT会議は、地図なしで旅をするようなものかもしれません。
この記事のまとめ
- 「後で説明」は後で取り返しのつかない声になって返ってきます
- 現場が会議に必要な理由は技術判断ではなく現場の声を届けるためです
- 「現場代表1人」では拾えない声が必ずあります
- 15分のヒアリングでも、会議室では出てこない情報が集まります
- 「自分たちが関わった」という感覚が、稼働後の定着率を大きく変えます
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