患者さん目線で見た『病院のシステム』の話

システム
現場SEあるある

作る側の視点だけで考えていると、見えなくなるものがあります。今日は患者さんの目線で考えてみます。

患者さん目線で見た「病院のシステム」の話

2026年 / カテゴリ:現場SEあるある / 読了目安:6分

システムを作る立場にいると、どうしても「作る側の視点」で考えてしまいます。処理速度、データの整合性、保守性。大切なことですが、その視点だけでいると、見えなくなるものがあります。それが「患者さんから見た病院のシステム」です。

元医事スタッフとして窓口に立っていたころ、患者さんの表情をたくさん見てきました。今回はその記憶をもとに、患者さん目線で病院のシステムを考えてみます。

① 受付で何度も同じことを聞かれる

「お名前と生年月日をお願いします」。受付で言われ、問診票にも書き、診察室でも先生に聞かれる。患者さんからすると「さっき書いたのに」という感覚が積み重なります。システム間でデータが連携されていない、あるいは確認ルールが変わっていないことが原因ですが、患者さんにはその理由は関係ありません。

「また同じことを聞かれた」という体験は、患者さんに「この病院はバラバラに動いている」という印象を与えます。情報連携は、患者さんの「安心感」に直結しています。

💡 患者さんの本音

「何度も同じことを聞かれると、自分の情報がちゃんと管理されているのか不安になる」という声を、窓口で何度も聞いてきました。システムの連携は、患者さんの信頼に関わる問題です。

② 待ち時間が「見えない」ストレス

病院の待合室で「あと何人待っているのか」「自分はいつ呼ばれるのか」がわからないまま待つことは、患者さんにとって大きなストレスです。同じ30分でも、「あと2人です」とわかって待つ30分と、何もわからないまま待つ30分では、体感がまったく違います。

待ち状況の可視化は技術的には難しくありません。でも「患者さんが何を不安に思っているか」を設計者が意識していないと、この機能は後回しになりやすいです。待合室の患者さんの表情を一度見れば、この機能の優先度が変わると思います。

③ 会計で「なぜこの金額か」がわからない

診察が終わって会計窓口に行くと、金額だけが書かれた明細を渡される。「今日は何の処置をしてこの金額なのか」が患者さんにはわかりにくいことがあります。医療費は複雑な計算式で決まるので、完全に説明することは難しいですが、「今日行ったこと」と「費用の内訳」が視覚的にわかりやすく示されるだけで、患者さんの納得感が変わります。

会計システムの設計者から見ると、明細は「出力されている」のかもしれません。でも患者さんから見て「理解できる」かどうかは別の話です。出力することと、伝わることは違います。

⚠ 設計者が陥りやすいこと

「データは出している」「機能はある」という設計者の視点と、「わからない」「不安だ」という患者さんの視点は、まったく別の次元にあります。機能の存在と、体験の質は別物です。

④ スタッフがシステムに向かっていて目が合わない

電子カルテの普及で、診察中に先生がずっとパソコンの画面を見ていることが増えました。患者さんからすると「自分を見てもらえていない」という感覚になることがあります。システムの操作に集中するあまり、コミュニケーションが変わってしまうという側面は、患者満足度に影響します。

これはシステムの設計の問題でもあります。入力の手間を減らし、画面から目を離せる時間を増やすことが、患者さんとのコミュニケーションを守ることにつながります。システムの使いやすさは、患者さんへの向き合い方にも影響します。

患者さんの体験を設計に組み込む

医療システムの設計において、患者さんは「エンドユーザー」の一人です。現場スタッフの使いやすさだけでなく、患者さんの体験まで含めて設計を考えられるかどうかが、本当に良いシステムの条件だと思っています。

「患者さんにとってどう見えるか」という問いを設計の段階から持ち続けることが、現場スタッフにも患者さんにも選ばれるシステムを作る近道です。作る側の論理だけでなく、使われる側の感覚を想像し続けることが、この仕事の核心にあると思っています。

✅ 現場で使える考え方

システムの設計を始める前に、「患者さんが来院してから帰るまでの流れ」を一度患者さんの目線でなぞってみてください。その体験の中に、システムが解決すべき本当の課題が隠れていることがあります。


この記事のまとめ

  • 何度も同じことを聞かれる体験は、患者さんの不安と不信につながります
  • 待ち時間の可視化は、患者さんの体感ストレスを大きく変えます
  • 「データを出す」ことと「患者さんに伝わる」ことは別物です
  • 入力の手間を減らすことが、患者さんとのコミュニケーションを守ります
  • 患者さんの体験を設計に組み込むことが、本当に良いシステムの条件です
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