何度聞いても慣れない一言があります。でもその言葉の裏に、大切なものが隠れています。
医療現場でシステムの話をすると必ず出る一言
2026年 / カテゴリ:現場SEあるある / 読了目安:6分
医療・介護の現場でシステムの話をするとき、必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。何件関わっても、どんな規模の施設でも、この言葉だけは変わりません。最初は戸惑い、次第に「また来たな」と思うようになり、今では「この言葉が出るかどうか」を一つの指標として見るようになりました。
その言葉とは何か。そしてその言葉の裏に何があるのかを、今回は正直に書いてみます。
その言葉は「うちは特殊なので」
「うちは特殊なので、一般的なシステムでは対応できないと思います」。この一言は、医療・介護現場でのシステム導入の場面で、驚くほどの頻度で登場します。小さなクリニックでも、大きな病院でも、在宅サービスの事業所でも。規模や種別を問わず、この言葉が出てきます。
最初のころは、言葉通りに受け取っていました。「この施設には本当に特殊な事情があるのかもしれない」と思い、詳しく聞き込みをしていました。でも経験を積む中で、少し違う見方ができるようになりました。
「うちは特殊」と言う施設の業務を丁寧に聞いていくと、8割くらいは他の施設でも同じ課題を抱えています。本当に特殊なのは残りの2割で、その2割こそが丁寧に設計すべき部分です。
「特殊」という言葉の裏にあるもの
「うちは特殊」という言葉の裏には、いくつかの本音が隠れていることがあります。一つは「変わることへの不安」です。今のやり方に慣れているスタッフにとって、新しいシステムは未知のものです。「特殊だから対応できない」という言葉は、「変えたくない」という気持ちの言語化であることがあります。
もう一つは「これまでの苦労を認めてほしい」という気持ちです。長年かけて作り上げてきた業務フローには、その施設なりの知恵と工夫が詰まっています。「一般的なシステムで解決できる」と言われることが、その苦労を軽く扱われているように感じることがあります。
「特殊」という言葉を正面から否定するのではなく、「どこが特殊なのかを一緒に整理しましょう」という入り口に変えることで、対話が始まります。
「特殊」を丁寧に分解する
「うちは特殊」と言われたとき、自分がよくやることがあります。「どの部分が特殊だと感じていますか?」と聞き、一つひとつを書き出してもらうことです。書き出していくと、多くの場合こうなります。標準的な業務フローと同じ部分が7〜8割、その施設ならではの手順が1〜2割、本当に他に類を見ない特殊な対応が数件。
この分解ができれば、「7〜8割は標準的なシステムで対応できます。残りの部分だけ一緒に考えましょう」という話ができます。「特殊」を丸ごと受け入れるのでも、丸ごと否定するのでもなく、分解して整理することが、現場との信頼関係を作る第一歩です。
「うちは特殊」と言っていた施設が、システム導入後に「思ったより普通に使えました」と言うことがあります。特殊だと思っていたことの多くは、使い慣れていないことへの不安だったと、後から気づくことがあります。
「特殊」を大切にすることも仕事
ここまで書いてきましたが、「うちは特殊」を全部否定したいわけではありません。本当に特殊な部分は、大切にしなければなりません。その施設が長年かけて積み上げてきた対応方法の中には、患者さんや利用者さんへの深い配慮が込められていることがあります。
標準化できる部分は標準化して効率を上げ、本当に大切な「特殊」な部分は守る。この線引きを一緒に考えることが、現場に寄り添ったシステム設計だと思っています。「うちは特殊」という言葉は、その施設を深く知るための入り口です。
「うちは特殊」と言われたら、「どこが特殊か一緒に整理しましょう」と返してみてください。書き出す作業が、お互いの理解を深め、本当に必要な設計の輪郭を明らかにしてくれます。
この記事のまとめ
- 「うちは特殊」は医療現場で必ず出る言葉で、裏に不安や本音が隠れています
- 8割は他施設と同じ課題で、本当に特殊なのは残りの2割です
- 「どこが特殊か」を一緒に分解することが、対話の入り口になります
- 標準化できる部分と守るべき特殊な部分の線引きが設計の核心です
- 「うちは特殊」はその施設を深く知るための入り口です
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